【みなと銀行 武市寿一社長 INTERVIEW】周りから任される人になるために、大切なこととは?
2024.09.17
スピーカープロフィール
武市 寿一(たけいち としかず)
株式会社みなと銀行 代表取締役社長。
1962年神奈川県生まれ。慶応義塾大学卒。1984年太陽神戸銀行(現三井住友銀行)入行。
2016年三井住友銀行常務取締役員。
2017年5月みなと銀行専務執行役員。同年6月専務取締役 兼 専務執行役員。
2021年4月から現職。
自分の好きを知ること・追求すること
野口
それでは早速インタビューをさせていただきます。武市さんはどのような学生時代を過ごされていましたか?
武市さん
今振り返ると、私は能天気な学生生活を過ごしていたなと感じています。
ゴルフと麻雀、合わせて「400日」
武市さん
高校生の頃は、ゴルフ部に所属して活動していました。
野口
ゴルフ部ですか!武市さんがゴルフを始められたきっかけはどのようなものだったのですか?
武市さん
ゴルフを始めようと思った明確なきっかけがあったわけではないのです。「友達がゴルフ部に入るらしい。じゃあ同じ部活に僕も入ろうかな。」そのような感じで入部を決めました。当時の私は、周りの人に流されて行動することが多かったのです。
部活動以外で行っていた活動も特にはありませんでした。今思うと、能天気な高校生活を送っていたなと思います。
部活動以外で行っていた活動も特にはありませんでした。今思うと、能天気な高校生活を送っていたなと思います。
野口
高校卒業後はどのように過ごされていましたか?
武市さん
私は中学受験で慶應義塾中等部に入学して、そのまま系列の高校、大学へと進学しました。大学生になってからも、高校生の頃から続けてきたゴルフと麻雀漬けの毎日。ゴルフをした日と麻雀をした日、そしてゴルフ場でのアルバイトもしていたので、それら全てを合わせたら年間合計400日になるくらい、没頭していました。
野口
400日!すごく没頭されていたのですね。もう少し先のお話をお伺いしたいのですが、武市さんは大学を卒業されるタイミングで銀行に入行されたと思うのですが、銀行の仕事に就こうと思われた経緯についてお伺いできますでしょうか?
武市さん
実は、就職活動をしていた時は、「絶対に銀行で働きたい」という強い気持ちがあったわけではなかったんです。
「早く遊びたいから就職活動はできるだけ早く終わらせよう」そんな気持ちが当時は強かったので、面接を受けた中で一番早く内定をいただいた銀行で働くことに決めました。だから、今の学生さんを非難できることは何もないです。
「早く遊びたいから就職活動はできるだけ早く終わらせよう」そんな気持ちが当時は強かったので、面接を受けた中で一番早く内定をいただいた銀行で働くことに決めました。だから、今の学生さんを非難できることは何もないです。
野口
そうだったのですね。学生時代、武市さんが麻雀やゴルフに没頭されていたように、今の高校生も遊ぶ機会や没頭しているものがあるのかなと思うのです。武市さんがお仕事をされている中で、そうした学生生活の経験が活きているなと感じた経験はございますか?
武市さん
すごくあります。仕事をしているなかで、遊びの中で培ったスキルが活かされているなとこれまで何度も感じてきましたよ。
野口
すごく気になります!
仕事で活きた遊びの経験
武市さん
例えば麻雀の場合だと、相手に勝つためには戦略を立てる力と試合の流れを掴む感性が必要なのです。そしてゴルフでも、ゲーム全体の流れを俯瞰しながら戦略を立てていく能力が不可欠です。それらのスキルは、社会人生活の中でも求められることが少なくありません。
野口
そうした遊びの中で得た学びと仕事が繋がった瞬間や、それらが仕事で役に立っていると感じられた具体的な出来事はありましたか?
武市さん
特に意識し始めたのは、マネジメント業務に携わりだした頃からですね。
その頃が「仕事って面白いのだな」と感じ始めるタイミングでもありました。
その頃が「仕事って面白いのだな」と感じ始めるタイミングでもありました。
野口
没頭していた遊びの中に、仕事に繋がる学びがあると思うと、学校の授業だけにとどまらず、自分の好きなことを見つけるためにもいろんな経験を重ねることがすごく大切な気がしますね。
武市さん
そうなのです。私は学校の授業を一生懸命受けること以上に、自分がどんな「好き」を持っているのかを知ることが非常に重要だと思っています。だからこそ、学生の皆さんにはぜひ自分の「好き」を知って、それに没頭してみてほしいです。
高校生に伝えたいこと その1
自分の好きを追求する経験をしてほしい
自分の判断軸となる「感性」を磨け。
野口
自分の好きなことを知り、追求していく経験が、社会人になってからも活かされているとのことでしたが、高校生が新しいことや周りの人と違うことに一歩踏み出すのってかなり勇気が必要だと思いますし、その勇気が出なくてなかなか挑戦できずにいる学生の方も少なくないと思うのです。
新しいことに挑戦されるときや重大な決断を下される時、武市さんはどのような考え方を大切にされていますか?
新しいことに挑戦されるときや重大な決断を下される時、武市さんはどのような考え方を大切にされていますか?
武市さん
自分で物事を決断できるようになるためには、自分についての理解を深めることが非常に重要だと思っています。
何が自分の強みなのか?
武市さん
銀行で働いていると、周りに優秀な人や高い成績を残す人が沢山います。そうすると、何も考えずに自分の実力で勝負をしようと思っても、周りの人には勝てないんですよね。
そこで求められるのが、何が自分の強みなのかを分析して、自分である程度理解をした上で、状況に合わせて対応することです。
私も高校生の頃は、周りに流されることが多かったのでそんな風には行動できていませんでしたが、働きはじめてから、自分を理解することの大切さを感じるようになりましたね。
そこで求められるのが、何が自分の強みなのかを分析して、自分である程度理解をした上で、状況に合わせて対応することです。
私も高校生の頃は、周りに流されることが多かったのでそんな風には行動できていませんでしたが、働きはじめてから、自分を理解することの大切さを感じるようになりましたね。
野口
確かに、自分の強みをどんな場面でどのように活かせるのかを知ることは大切ですね。銀行で働きはじめてから自己理解の大切さを感じられたということですが、周りの環境と比較をして劣等感を感じてしまう学生も少なからずいるのかなと思うのですが、その点についてはどう思われますか?
武市さん
そうですね。その点で言うと、私の原点となっているのは周りの環境に対しての反骨精神なのです。
野口
反骨精神!どういった時にそのような気持ちを抱かれたのでしょうか?
「勝ちたい」じゃなくて「負けたくない」
武市さん
慶應に通っていた頃、私の親はサラリーマンだったのですが、当時あの学校にはサラリーマンの子どもはほとんどいなくて、周りはみんな社長の子どもや裕福な家庭の人ばかりでした。クラスメートと自分の生活の差を感じることも多かったです。だからこそ私の原動力は「勝ちたい」じゃなくて「負けたくない」だったのです。
野口
それはつまり、周りの中で一番になりたい!という考えではないということなのでしょうか?
武市さん
そうです。自分の強みを考えるようになったのは勝てる戦略のためではなく、「負けたくない」という気持ちを抱いた時に、負けないための戦略を立てるためです。自分はどうしていくべきなのかや、今置かれている環境の中で自分が出来ることをその時に置かれた立場で考えていきましたね。
野口
なるほど…。自己理解は、自分の強みの活かし方を知るためにも大事だと思いますし、強みが理解できていると、何かに挑戦するときの勇気にも繋がりそうですね。
武市さん
自分の強みは何なのか。そして自分の苦手なものは何なのか。自分自身のことを知ろうとする中で、徐々に自分の決断にも少しずつ自信を持つことができるようになっていくのだと思います。
高校生に伝えたいこと その2
自分の強みは何なのか。そして自分の苦手なものは何なのか。負けないための戦略を考えてほしい。
任される人になるために大切なこと
野口
若い人が責任ある仕事を任されるのって簡単ではないと思っていまして。武市さん何か大事にされてきたことはありますか?
武市さん
おっしゃる通り、任される人になるって本当に難しいことだと思います。そういう人になるためには、自分の常識を持つことがとても大切だと思います。
野口
「自分の常識」ですか!
武市さん
自分の常識は、すなわち物事を判断する基準のようなものですね。世の中正解なんてわからないことだらけじゃないですか。そういうわからないことに直面した時に判断できる自分の中での常識や、感性を持つことが必要なのかなと思います。
野口
そのことを強く感じられた経験はございますか?
武市さん
例えば私の仕事の中だと、現代ではAIを活用して財務諸表の点数などを出すことができますよね。商売と出された財務諸表を照らし合わせた時に納得感があるかどうかや、5年後10年後この会社がどうなっていくかという想像が、自分の常識の中で腹落ちするかどうかということが結局非常に重要なのです。すなわち、自分の感性を磨くことが大事だと思います。
野口
物事を判断する時、感性が重要になってくるのですね!銀行って非常にロジカルな世界だと思っていたので、とても面白いです!
武市さん
例えば決算書のことに関して言うと、数字を誤魔化して提出する人もいるんです。そうした場合には数字だけを見て判断していてはいけなくて、提示された数字とお客さまから聞いている事業の話がきちんとマッチングしているかどうかを感性で判断できることが重要だと私は思います。
野口
数字に疑いを持つことも、それが正しいのだと判断することにも、感性を持つことが活きていきそうですね。
武市さん
そうなのです。そしてその判断するための常識を持つ、すなわち自分の感性はどうやって磨くかというと、いろんなことを経験するほか無いのです。だからこそ、今の学生の皆さんにはいろんな経験をして、感性を磨いていってほしいなと思います。
高校生に伝えたいこと その3
様々な経験を通して、感性を磨いていってほしい
自分の頭で考えて行動すること
野口
武市さんは、もし今学生時代に戻れるとしたらやってみたいことなどはありますか?
武市さん
もし今学生に戻れたなら、起業したいです。
野口
起業ですか!どうして起業をしたいと思われるのですか?
武市さん
自分で0から1を作り上げる経験こそが、人を成長させるのですよね。実は当時も「いつかは起業しよう」という気持ちはありました。ただ実際は周りに流されることが多かったですし、起業する勇気もなかったので実現はしませんでしたが…。もし学生に戻れるのなら、そうした自分で作り上げる経験をしたいと思いますし、そういった点では、自分の学生時代の過ごし方に対して、若干の後悔が残っていますね。
野口
ご自身の学生時代に対して感じられている「後悔」を踏まえて、武市さんが今の学生に何か伝えたいことなどはございますか?
武市さん
これは、私が新入社員に向けて伝えている言葉なのですが。
「『自分の頭で考えること』しか信用するな。とにかく自分で考えて行動すること」
このことはぜひ、今の高校生の皆さんにも伝えたいですね。
「『自分の頭で考えること』しか信用するな。とにかく自分で考えて行動すること」
このことはぜひ、今の高校生の皆さんにも伝えたいですね。
野口
おおお、とっても刺さります…!
武市さん
この言葉は言い換えると「周りに流されるな」ということにも繋がるのかもしれないですね。現代ではインターネットなどを通じて簡単に情報にアクセスできる反面、情報に流される可能性も高まってきていますよね。そして、自分で判断することが、自分を一番成長させてくれるのです。だからこそ、学生の皆さんには自分で考えて行動することを積み重ねてほしいと思います。
高校生に伝えたいこと その4
周りに流されず、自分の頭で考えて行動すること。自分で考え、自分で行動することで初めて成長できる。
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